第33章 毛利元就の思惑
安土城から小谷城まではおよそ50キロほどの距離のため、秀吉たちが早く戻って安土の警護に回れば最悪の事態は避けられる。
撤退ならば一刻あれば終わるが戦となれば終息までに何日かかるかわからない。
それはもちろん蘭丸にもわかっていた。
『直美の世話役は外されたが、それよりももっと重大な役目を受けたものだな』
光秀が蘭丸に視線を向ける。
信長も同時に蘭丸に視線を向けた。
『すでに小谷城は秀吉たちが包囲している。急がねば説得が全て水の泡になる』
まずは顕如の元へ行き話をしなければならない。
地下牢に捉えられた顕如が説得に応じるかは全く不透明だ。
『皆の事が大切です。信長様、門徒たちを撤退させるため顕如様と話をさせてください』
『すぐに行け。顕如が説得に応じなければその時点で戦を覚悟しろ』
蘭丸は立ち上がると信長と光秀に深く一礼して足早に地下牢に向かって行く。
光秀は広間を出ると自らが率いる鉄砲隊を安土のいたるところに配置していく。
しばらくした後、信長は家康と織田軍の兵たちと共に一乗谷城に向けて出発したのだった。