第32章 春日山城
『佐助、どこへ行く』
『これからまきびしの材料を買いに行ってきます。2人はもう城に戻るんですか?』
『いや、まだだ。今から気晴らしに馬で出かける』
(え?馬で?一言も聞いてないけど)
『そうですか、謙信様が一緒なら心配ないですね。でも暗くなる前に戻ってきてください。皆が心配しますから』
『ああ。わかったからまきびしの材料の他にワカメと梅干しを買っておけ。それと城下町で俺とこの女の事を聞かれたら適当に答えておけ』
(適当に答えるって難しいよ!?それにワカメ…ツッコミ入れたいけど逆ギレして斬るって言うよね!だからやっぱり言えない、黙っておこう)
『ワカメと梅干しですね。まきびしよりもそっちの買い物の方が重要だな』
(佐助くん、なんかごめん!)
佐助と別れた後は謙信の言っていた通り、馬に乗るため厩に向かった。
『お前の馬は一目ですぐにわかるな。他の馬とは全く違う。いい馬だ』
『ありがとうございます。御影っていう名前なんです。元々は遠江鹿毛っていう名前で、信長様から譲っていただきました』
そう言った瞬間、謙信の動きが一瞬止まる。
『信長が?ふん、ならば俺もお前に馬を譲ってやる』
(えっ…こんな所で張り合ってきた…謙信様って信長様にはどんな事にも負けたくないんだ)
謙信の表情はいたって真面目だ。