第32章 春日山城
『景家さん、直美さん、そんな所で何してるんですか?』
『何かお手伝いがしたいと思って謙信様を探しに来たんです。あ、お部屋も見てきました』
『必要な物があればすぐに言え。調達して部屋に運ばせる』
『ありがとうございます』
佐助は謙信の後ろで真っ二つになったまきびしを探しながら懸命に拾っていた。
『佐助君!私も手伝うよ!』
拾うのを手伝おうとしたのだけれど。
『待て。そんな事は佐助にやらせておけばいい。気にするな、いつもの事だ』
『直美様、指を怪我されては困ります。手出しは無用ですよ』
謙信と景家からそう言われてしまい、まきびし拾いは断念する。
(さっそく手伝いが出来ると思ったのになぁ)
『謙信様、私、ここにお世話になっている間だけでも皆さんの役に立ちたいと思っているんです。私にも何か出来る事はありませんか?』
やはり直接謙信に聞くのがいいと思って聞いてみたのだが。
『何を言っている。お前は遊びに来たのだから手伝いなどする必要はない』
(うっ、門前払いだ。これは別の角度から攻めないとダメみたいだな)
どうやらこちらのお願いは聞き入れてもらえそうにない。