第32章 春日山城
『大変良い心がけですね。それでは謙信様の元にすぐに伝えに行きましょう』
景家の後に続いて部屋を出る。
景家の事は最初は口うるさい謙信の世話役だと思っていた。
しかし何度か接するうちに、実はかなり強くて頭の良い人なのだと思うようになっていた。
景家と一緒に謙信を探すと、どうやら庭の方から聞いた事のない音が聞こえてくる。
一体何だろうと近づいてみると、庭にいたのは謙信と佐助の二人だった。
佐助はまきびしを手に持ち、それを謙信にむかって投げようと振りかぶっている。
そして、そのまきびしを全力で投げたその瞬間、謙信が姫鶴一文字を鞘から抜き真っ二つに切り落とした。
どうやらそれを二人で何度も繰り返している様だ
『一体何をやっているんでしょう?』
『ご存知ありませんか?あれは謙信様が佐助殿から教わった野球という遊戯らしいですよ』
『野球?遊戯?』
(なんか色々違うよ!特に謙信様が!使うの刀じゃないし、投げたの斬ったらダメなんだけど…)
景家と会話をしていると謙信と佐助がこちらの存在に気がついた様だった。