第32章 春日山城
『うわーっ!!部屋がそのままだ!!』
景家に案内された自分の部屋がそのまま残してあった事に驚愕する。
前回、春日山城に人質として滞在していたのは短い期間だったのにも関わらず、全てが全く同じでまるでこの部屋だけ時間が止まっている様だった。
『直美様が戻られるのをずっとお待ちしておりました』
(景家さんがそれを言うと意味深すぎるんだけど…)
『部屋がそのままで驚きました。ありがとうございます。あの…先日は色々とありがとうございました。景家さんが謙信様たちを一乗谷城に呼んでくださらなければ今頃どうなっていたかわかりません』
『私が呼んだのではありませんよ。私は状況を説明する文を書いただけで、謙信様が自ら来られたのです』
そう話す景家の表情はとても嬉しそうだ。
『そうだったんですか。謙信様にも改めてきちんとお礼を言わなきゃいけませんね』
『では謙信様とお二人でお酒などいかがですか?聞いた話によると直美様は酔うと大胆になるとか…』
『なりません!全然!』
(きっと信玄様が教えたんだ。謙信様が景家さんに言うのは想像できないし。立ったまま寝た時の事だよね、もう本当に気を付けよう)
確かにあの時は立ったまま寝た、それも謙信の腕の中で。
思い出すだけで顔が真っ赤になってしまうくらい恥ずかしい出来事なのだった。