第31章 蘭丸
『勝負あったな。蘭丸、貴様は本日をもって直美の世話役から外れてもらう』
『えっ!』
驚いて目を開けた蘭丸はそのまま言葉を失っている。
『信長様、今さら何を言っているんですか。コイツは俺たちを裏切ったんですよ!世話役も何もないはずです。そもそも間者は死罪のはずですよね』
家康も信じられないといった表情をしている。
『蘭丸は命を賭けて戦った。今後、コイツの命は俺が預かる。蘭丸、貴様にしか出来ない事がある。顕如に合わせてやる。力を貸せ』
蘭丸は小さく頷くと、斬られた時に落とした忍刀を拾って鞘に収める。
『顕如様のこと、ありがとうございます』
『2度の裏切りは許さん。死にたくなければしっかりと肝に命じておけ』
信長も刀を静かに鞘に収め、こうして一対一の勝負は幕を閉じたのだった。