第31章 蘭丸
『はい。小谷城は城主の浅井長政が安土の地下牢に捕らえられ、その後は織田の傘下に入ることを条件に浅井の家臣たちが城を治めていました。
他の城よりは明らかに攻めやすいです。これと同様に朝倉のいた一乗谷城もまた狙われるでしょうね』
信玄と佐助の言っていた通り、安土城では信長の指示のもと、朝から出陣の準備が行われていた。
『政宗、秀吉、三成、急だが小谷城のことは任せたぞ。現場での指揮は秀吉が取れ。策は三成が立てろ。政宗は思いっきり暴れてこい。だが一人も殺すな』
『それは殺さずに斬れってことですか?』
政宗が確認のため信長に質問する。
『ああ、そうだ。それがこちらの作戦だ。それさえ守れば後は何をしてもかまわん』
政宗たちは顔を合わせると、それぞれが納得したともしていないとも取れる表情を浮かべて安土城を後にしたのだった。
城に残った信長、光秀、家康は広間で越前の地図を広げながら次の戦について話し合いを続けていた。
『さて、時間だな。家康は今から俺と共に引き渡し場所に来い。光秀は城で待機だ』
その後、信長は直美に贈った遠江鹿毛の背に乗り、家康と共に引き渡し場所へと向かったのだった。