第31章 蘭丸
『失礼します、謙信様、朝から何やってるんですか』
『鍛練にしちゃかなり物騒だぞ』
部屋に全員が揃ったのを見ると謙信は刀を鞘に収める。
『見ての通りだ。早く引き渡し場所に行け。さっさと春日山に帰るためにもな』
『引き渡し場所と時間を書いた文は俺が安土城に届けてくるよ。どんな形になるかわからないけど早く終わらせよう』
それからすぐに蘭丸が書いた文を持って佐助は安土城に向かう。
そしてその文はすぐに信長の元へと運ばれて行った。
数刻後、蘭丸と直美は昨日と同じ引き渡し場所に来ていた。
少し離れた所で謙信たちが様子を見ている。
『佐助、安土城の様子はどうだった。すでに出陣していたか?』
信玄からの問いに佐助は一瞬驚いた反応をする。
『さすが、三ツ者からの情報は早いですね。安土城では戦の準備をしていましたよ』
『戦だと?まさか信長は顕如を引き渡すつもりか?』
謙信が会話に加わる。
『いや、それは違う。生き残っていた本願寺の門徒、つまり顕如の手下たちが集まって昨晩、小谷城を攻めたらしい。それを治めるために織田軍が出陣するって報告を受けてるぞ』
『小谷城?景家に偵察に行かせた浅井長政の城だな』