第31章 蘭丸
(髪の仇を?嘘でしょ!?)
『か、髪は謙信様からいただいたワカメを食べればすぐに伸びますから!だから今は刀を収めてください。ね!』
ゆっくりと移動して、謙信と蘭丸の間に入った。
『これは武将としての意見だ。信長はおそらく引き渡しには応じないだろう。だからこのまま春日山に来い。存分にもてなしてやる』
『でも、春日山に行けば戦がなくなるとは限りませんよね』
『だとしても、時間を稼いで戦の準備が出来るだろう。どの道、戦になるのならまずは準備から楽しまなければな』
(ああ…そういえば謙信様は戦うのが何より好きだったよね)
2人のやり取りを聞いて蘭丸が目を覚まし、謙信がこちらに刀を向けているのを見ると、とっさに体を起こして直美の体を引く。
『うわ、あっぶなーい!直美を奪われる所だったー!』
『おい、織田軍に復讐する前に俺と勝負するか?』
『謙信様も蘭丸君もお願いだから落ち着いてください!』
部屋の中が騒がしくなったのに気づいて信玄と佐助も廊下から急いで駆けつけた。