第31章 蘭丸
『やはり何か賭けておくべきだったかな、俺としてはその方が気合いが入りそうだ。例えば俺が勝ったらこのまま俺たちと春日山に来る、なんてな』
『今さら賭けるなんてダメです、男に二言はないですよね、信玄様?』
ここでそう言い返したのは蘭丸だった。
いつもの調子で早くも信玄や謙信と打ち解けている様に見える。
『男に二言はない、か。まだまだ若いな。それにそういう真面目なところがアイツにそっくりだ』
『信玄様、アイツって誰の事ですか?』
今度は直美が信玄に質問を投げ掛ける。
すると信玄は碁石を置きながらゆっくりとその質問に答えた。
『それはまさに明日救おうとしている顕如の事だよ』
『!?信玄様は顕如様と知り合いなの?』
これには蘭丸が直美よりも驚いた表情をしている。
『ああ、アイツとは酒を酌み交わす仲だった。今はもう袂を分かつことになってしまったがな』
意外な2人の繋がりがとても気になって、もう囲碁勝負どころではなくなってしまった。