第31章 蘭丸
『顕如様の事だけど、明日改めて引き渡し場所を設けるよ。そしたら今度こそちゃんと安土城に帰れるからね』
蘭丸の頭の中ではすでに明日の予定が立てられていた。
『面白そうだから引き渡し場所まで俺たちも同行してやる。道中、姫鶴一文字の切れ味を確認出来そうだからな』
(謙信様たちが一緒に来てくれるならきっと伊賀の忍に遭遇しても大丈夫だよね)
だが会話を黙って聞いている佐助の表情は険しかった。
(残念だけど、謙信様と信玄様が簡単に直美さんを安土城に帰すはずがないだろうな。面倒な事になる前に光秀さんに今の状況を文に書いて知らせておこう)
佐助は信玄と直美が囲碁の勝負をしている間、謙信のお酒を買いに行く事になり、ついでにこっそり文を書いて光秀の御殿に届ける。
そしてその内容はもちろんすぐに信長に報告される事となる。
佐助から届いた文を持って、光秀は天主にいる信長の元へと急いだ。