第31章 蘭丸
そしてその日の夜。
安土城の城下町にある小さな宿屋の一室で謙信、信玄、佐助の3人と、直美、蘭丸の2人が向かい合っていた。
『つまり、一晩でいいからここに居させて欲しい、そういう事?』
佐助が無表情のまま蘭丸に話しかける。
『そう。俺も直美も狙われてるし、今この状況でこんな事を頼めるのはあなたたちしかいないんだ』
『この女はいいとして、俺たちにお前を守る理由がない』
謙信が冷たく言い放つ。
『顕如を救い出そうとしているのは俺たちの意思と反してるしな』
信玄もすぐには首を縦に振らない。
だが…
『謙信様、信玄様、お願いします。私、さっき伊賀の忍に襲われたところを蘭丸君に助けてもらったんです。一晩だけで構いません。お酒にも囲碁にも付き合いますからお願いします!』
(いつまた命を狙われるかわからない。だからせめて一晩だけでも!)
『……仕方ない。一晩だけだ。顕如を救い出す手伝いはしない。泊めてやる代わりに2人で酒の相手をしろ』
『姫、久しぶりに囲碁の勝負をしよう。疲れているだろうから今夜は何も賭けなくていいぞ』
『謙信様、信玄様、ありがとうございます!』
直接直美が訴えた所で今夜の滞在先が決まった。