第31章 蘭丸
(誰か助けて!お願い!!)
馬乗りになって両手を押さえつけられた状態でもう一人の忍に口を塞がれる。
言葉も上手く出せなくなったその直後、上にいた男の体が自分の横にドサリと倒れ込んだ。
(えっ!!)
すぐに口を塞いでいた手が外れ、もう1人の忍が一歩後退するのと同時にその場に倒れ込む。
『直美!大丈夫!?今片付けるから!』
混乱する状況の中、その目に飛び込んできたのは蘭丸の姿だった。
蘭丸は他の忍たちを少し離れた場所に誘導するようにして戦い終えると、すぐに直美の元へと駆け寄る。
『直美!1人にしてごめん!怪我はない?何もされてない?』
『うん、私なら何もされてないから大丈夫だよ』
『よかった~。間に合わなかったらどうしようって思っちゃった!』
きっと修羅場をくぐり抜けて急いで探しに来てくれたのだろう。
いつもの様に元気な口調だけれど、肩で息をしているのが一目で分かるほどだった。
馬乗りになってきた男の背中には忍刀がまっすぐに刺さっているのが見える。
口を塞いでいた男も同様に首と胸の急所にクナイが深々と突き刺さっている。
(蘭丸君って、見かけによらずメチャクチャ強いのかも。こんなの見せられたらますます逆らえなくなるな…)
『助けてくれてありがとう』
立ち上がって着物についた汚れを払い落とし、蘭丸にお礼を伝えた。