第31章 蘭丸
『蘭丸君も無事だったんだね、良かった』
とりあえず、お互いピンチを切りぬけた事にほっとする。
『さっき、追加の依頼の事ちょっと聞いちゃったの。どうして私を織田軍の元に逃がそうとしてくれたの?』
『追加というか、依頼が変更になったんだ。顕如様の救出は後でいいから直美をすぐ安芸に連れてこいって文に書いてあった。10倍の報酬を払うから従わない奴は殺していいともね』
『なんかメチャクチャな人だね…』
『男に二言は無いって言うでしょ。俺は顕如様を救って直美を安土城に帰す。直美とそう約束したんだ』
あれは口だけのその場しのぎの約束だと思っていたのに。
自らの命を危険に晒しても約束を守ろうとしてくれるなんて、こちらとしてはちょっと複雑な気持ちになる。
『結局、今回は顕如様を救えなかった。あんなふざけた文さえ来なければ絶対に上手くいってたのに』
『私が言うのも変だけど、蘭丸君いいの?自分の身が危険になるんだよ?』
『いいもなにも、あんな人のところに直美を行かせるわけにはいかないよ』
(あんな人ってもちろん毛利元就の事だよね。確かに良いイメージはないけど)
ここで一つ気になる事を聞いてみる事にした。