第31章 蘭丸
一方の織田軍では
『信長様、間もなく引き渡し場所に到着いたします』
『全員気を抜くな。急襲に警戒しろ』
秀吉を先頭に、顕如を連れて和田山の麓に少しずつ近づいていた。
織田軍の一番後ろを三成が守りながら進んで行く。
しかし指定された引き渡し場所まで来ると全員が目を疑った。
そこにあるのは数人の忍が息絶えて倒れている光景だったのだ。
全員で周囲を見渡すがどこにも直美の姿はない。
『これは一体どういう事だ』
信長の表情が険しくなる。
『まだこの状況になってからそんなに時間が経っていないようです』
付近を調べていた秀吉が信長に報告する。
『周囲をくまなく捜索しろ。この状況を作った者と直美が必ず近くにいるはずだ』
信長の命令により織田軍は和田山を中心に全方向へと捜索を開始する。
しかし日が沈み始める頃になっても何の手がかりも掴めず、一旦安土城へ戻る事になったのだった。