第31章 蘭丸
翌日。
安土城から東にある愛知川(えちがわ)の西岸、和田山の麓が顕如と直美の引き渡し場所に指定されていた。
安土城からは5キロ程しか離れていない。
先に指定された場所に着いたのは蘭丸たちだった。
到着するとすぐに蘭丸の元に新たな文が届けられる。
それには毛利からの追加依頼が記されており、蘭丸は目を通すとその文をビリビリと破いてその場に捨ててしまった。
『俺はまず顕如様を救い出す。その後はどんなに報酬を詰まれても毛利さんとは手を切らせてもらう』
『蘭丸君?』
一体何が書いてあったのだろうか。
『巻き込んで本当にごめん。もうじき安土城に帰れるからね』
細かい事情はよくわからないが、今は蘭丸の言うことに従うしかない。
安土城に戻る方法が他に浮かばないし、監視の目をくぐって逃げ出すこともできずにいた。
顕如が戻った後は馬でどこかへ向かうらしく、川岸には馬を数頭待機させているのが見える。
しばらくすると、蘭丸と一緒に来ていた忍の一人が急いでこちらに駆け寄ってきた。