第31章 蘭丸
家康の表情がその文を見て曇る。
『明日?ちょっと急すぎだと思いますけどどうするんですか。応じるんですか?もしかしたら罠かもしれないですよ』
『ああ。罠かもしれぬが長引かせるだけ時間の無駄だ。罠であれば罠ごと食ってやればいいだけだ。引き渡し場所はここから近い。今のうちに休んでおけ』
突然決まった明日の予定に戸惑いを隠せなかったが、時間を無駄にしたくないのは家康も同じ気持ちだった。
一方、蘭丸の元にも文が届く。
『毛利さんから?』
文を開くと顕如の引き渡し場所と日時が記されていた。
『明日か、ちょっと急すぎるけどどうせあらかじめ用意してあった文なんでしょ。この依頼が終われば顕如様が戻ってくるし、報酬も入るし。まさに一石二鳥だからいいけどね』
明日は顕如と直美の身柄を交換すれば短時間で誰も傷付かずに終わる。
誰もがそう信じて疑わなかった。