第7章 風魔の忍
翌朝、太陽が空高く昇ってから信長は目を覚ました。
最初に目に入ったのは安堵した表情の家康の姿だった。
『まだ横になっていてください。出血は止まりましたけど、傷痕がまだふさがってません。毒はもう大丈夫だと思います』
家康の声が聞こえ、天幕の外にいた政宗と三成が急いで中に入ってきた。
2人とも安心した様子で信長の元に駆け寄る。
信長は支城を潰した報告と自分がここに運ばれるまでの経緯を聞くと、早くも次の指示を出した。
『政宗、早駆けで安土に戻れ。急いで小田原に斥候を送るよう光秀に伝えろ』
『小田原ですか?』
政宗が眉をひそめる。
『ああ、北条が天下の統一を企て、すでに動き始めている。直美が風魔に連れ去られた』
その場にいる全員の表情が怒りに満ちていた。
少しの沈黙の後、政宗は立ち上がり安土へと馬を飛ばした。
『この場所にもう用はない。支度を終えたらすぐ安土に帰るぞ』
信長はゆっくり体を起こす。
『そう言うと思ってました。でも無理しないでください……って言っても無駄だと思いますけど』
『念のため救護部隊とともに安土に戻りましょう』
体調は心配だったが家康と三成も早めの帰城には賛成だった。
その日、3人は暗くなる前に本陣を後にした。