第31章 蘭丸
『これは簪と髪と共に届けられた文だが単なる脅しだ。顕如が生きてここにいるうちはあいつは無事だろう』
武将たちの不安を取り除く様に信長が付け加える。
『この文によると要求は顕如の解放だ。本来であれば要求を飲むつもりはない。だが今回は別だ』
信長のその言葉を聞いて皆の表情から険しさが少しだけ消えていく。
『近いうちに顕如の引き渡し場所について再び連絡があるはずだ。状況によってはその場が戦場になることも考えられる。常に準備を怠るな。引き続き全員で城下の見回りを続けろ』
軍議がおわると、外はすでに暗くなっているのに全員が城下の見回りへと向かっていく。
信長の言う通り、例え直美が無事だったとしても次の知らせが届くまでの時間がとても長く感じられ、全員何かせずにはいられぬ状態だった。