第31章 蘭丸
天主に行った時に動きがあるだろうと言っていた事を考えると、今の状態は納得出来る。
それが信長の思惑通りなのかはわからないけれど。
しばらく歩いていると、まるで戦の時の本陣の様に天幕が用意されている場所を見つけた。
『落ち着かないかもしれないけど今日はここで休んで』
蘭丸に促されて天幕の中に入ると一気に疲れが押し寄せてきた。
ここまで歩いて来たということは、安土城からまだそんなに離れていないはずだ。
運が良ければ誰かに見つけてもらえるかもしれない。
しかもこの状況で手足が自由に動かせるのは不幸中の幸いなのだ、そう前向きに考えることにした。
その日の夜。
安土城の広間には武将たちが集められ軍議が行われていた。
『光秀、全員に説明しろ』
信長に促され、光秀がこれまでの報告を交えながら説明を始める。
蘭丸が伊賀の忍であり、顕如と繋がりがあること。
地下牢に忍び込み、顕如を逃がすために綿密な計画を立てているであろうこと。
蘭丸が遅い時間に一人で地下牢に向かう所を直美が目撃していたこと。
最後に秀吉が受け取った文を広げると、武将たちの表情が更に険しくなった。