第31章 蘭丸
その頃、安土城下で伊賀忍狩りを楽しんでいた謙信たちは……
『佐助、つまらぬ』
『謙信様、俺もです』
『おいおい、じゃあそろそろ春日山に帰るか?』
『まだだ、まだ安土の酒を飲んでいない』
『では今からお酒を飲みに行きましょう。城下の忍は安土の皆さんが何とかするでしょうから』
3人並んで城下町を歩いていると、安土城から出てきたばかりの武将たちと鉢合わせた。
佐助がすぐに声をかける。
『安土の武将の皆さん。これから飲みにでも行くんですか?』
『は?そんなわけないでしょ。三成なんかと外で一緒に飲むわけないし』
『家康様と城下で一緒に飲むのも楽しそうですが、今から見回りに行くのですよ』
『全員でか?城下で何かあったのか?』
信玄の質問に秀吉が答える。
『直美が城から消えた。顕如の解放を要求する文と共に簪とあいつの髪が届けられたんだ』
『『!!』』
秀吉の説明に家康が一言付け加える。
『遠くには行ってないだろうから、俺たちは時間の許す限り城下の見廻りを続ける。あんたたちも何か情報が入ったら教えて』
家康はそう言うと一人で先に進んで行ってしまった。