第31章 蘭丸
直美は蘭丸のすぐ近くを言われるがままに歩き続けていた。
蘭丸が地下牢にいる顕如を救い出そうとしていたなんて何度考えても受け入れられない。
しかもその正体は忍で、顕如を救う命令を下した雇い主は毛利元就。
蘭丸と顕如の関係も気になるけれど、毛利元就と顕如の関係に繋がりがあったなんて。
目の前で起きている事をずっと受け入れる事が出来ないままでいた。
『直美?何考えてるの?』
(あ、また百面相してたかも…)
急に蘭丸に話しかけられてはっとした。
『蘭丸君、もしも計画通りに行かなかったらどうなるの?』
『俺がこんなことしなくても、顕如様を囚われて気の立っている一向宗の生き残りの門徒たちが勝手に動き出すよ。復讐のために直美だって狙われる。言っとくけどそうなったら命の保証は出来ないし、毛利さんも黙ってないだろうね』
(結局は戦いが待ってるって事なのかな。戦えば大勢の命が失われるのに…)
『そっか。私は信長様の決定に従うから蘭丸君の計画通りにいったらすぐ安土城に帰らせてね』
『うん、約束するよ。上手くいったらだけどね。怪我させたくないから絶対に逃げ出そうだなんて思わないで』
ここからの判断は信長に委ねるしかない。