第31章 蘭丸
『信長様、文が届いてから時間がそんなに経っていません。まだそう遠くには行っていないはずです』
『まずは全員で城下をくまなく探し出せ。実行犯は生きたまま捕らえ、直美の居場所を突き止めろ。日が沈んでも見つからない場合は軍議を行う』
『わかりました。今すぐ城下に向かいます』
秀吉は天主を後にするとそのまま真っ直ぐ城下へと向かっていった。
その後、秀吉と入れ替わる様にして光秀が天主にやってくる。
『秀吉が来ていた様ですね』
『ああ、こんな物が届いたと慌てて報告に来たな』
信長が光秀に届いた文を渡す。
『つまりは顕如が生きてここにいるうちは直美も無事という事でしょう』
『ああ。手荒な扱いは受けていないはずだ』
『鼠の正体は安土に再び潜り込んだ伊賀の忍でその大将は顕如。さらにその後ろにいるのが毛利とは綺麗に繋がりましたね』
『直美のおかげで退屈している暇がないな』
『文にそれしか書いていないという事はまた改めて向こうから接触があるかと』
『まずは向こうの出方を待つ。これまで通り蘭丸について調べを進めろ』
信長からの指示を受けると光秀はそのまま地下牢へと向かっていく。
足を止めたその先にいたのは光秀が鼠の大将だと言っていた男、顕如だった。