第31章 蘭丸
その頃秀吉は直美が部屋にいない事に気付き、安土城の中を探していた。
しかしその姿はどこにもない。
(あいつ、いい子にして待ってろよって言ったのに一体どこに行ったんだ)
直美を探して廊下を歩いていると女中に呼び止められ、文を一通渡される。
渡されたのは信長宛ての文で、中に何か入っているようだ。
差出人の名前はなく、持って来た女中もたった今城門の前で門番をしている兵から託されたとの事だった。
不振に思った秀吉がその場で文を開くと、中から簪が落ちて廊下を転がっていく。
(あれはさっきあいつがつけていた簪だ!)
文を開けば直美の物と思われる髪が入っている。
『くそっ!一体誰の仕業だ!!』
秀吉は簪を拾うと文を手に、足早に天主へ戻って行った。