第31章 蘭丸
『それってもしかして毛利元就、違う?ついでに言うと蘭丸君は忍なんじゃない?気配を消すなんて普通の人には無理だもん』
『当たり。俺は伊賀で忍として育てられたんだ。数年前に織田軍の攻撃を受けて里を追われた後、顕如様に腕を買われて織田軍に潜り込んでたんだよ』
(やっぱりそうだった…)
『たとえ誰が相手でも信長様は誰一人地下牢から出したりしないから!』
『そうかな、小田原と越中まで軍を率いて助けに来てくれたんでしょ?全部知ってるよ。直美と引き換えなら上手くいくって毛利さんから言われてるから』
いきなり色々な話をされて頭の中が整理しきれない。
近寄ってきた蘭丸から逃げようとしたが、横にいた男たちにすぐ捕まってしまう。
『ごめんね。危ないから動かないで。ちょっとこれもらうね』
簪を引き抜かれ、髪を一房手に取られた。
蘭丸が腰の刀を抜いて手にした髪を切る。
それを男の一人に渡すと安土城に届けるよう命令を下した。
『顕如様を早く地下牢から出してもらわないと。それまで直美は世話役の俺が面倒みるから逃げようだなんて想わないでね』
何を言われても頭が混乱してしまい、ここから先は言葉が全く出てこなくなってしまった。