第31章 蘭丸
『違う人だと思うようにしてたけど、やっぱりあれは蘭丸君だったんだね。でも何で?どうしてなの?』
『それは…今からわかるよ。怪我したくないなら俺の言うこと聞いて、お願い』
蘭丸が器用に指笛を吹くと、数人の男たちが死角となっていた大きな木の後ろから現れた。
『蘭丸様、こちらが直美様ですか?』
男の一人が蘭丸に尋ねる。
(蘭丸様?蘭丸君、一体何者なの?)
『うん、そう。絶対に手荒な真似はしないで。直美、ごめんね。顕如様と引き換えに安土城に帰してあげるから』
『顕如……様?』
様をつけて呼ぶなんてよほど崇拝しているか、主従関係にあるかだ。
『嘘でしょ!!蘭丸君ってまさか顕如の手下なの?』
『そうだよ。俺が安土に戻ってきたのは顕如様を救うため。でもその命令を下したのは違う人なんだけどね。直美は鋭いからもうわかってるんじゃない?』
これまでの事を思い返すと思い当たる人物は一人しかいない。
その人と顕如が繋がっているのだなんて本当に考えたくないけれど。