第31章 蘭丸
よく考えてみると安土城から秀吉の御殿までの距離はそんなに離れていない。
それは秀吉が信長の右腕として仕えていて、何か起きた時にすぐ安土城に駆け付ける事が出来るように配慮されているからだ。
(秀吉さんの御殿なら近道は必要ないんだけどなぁ)
機嫌良さそうに歩く蘭丸の後ろ姿をあれこれ考えながらついて歩いた。
『ここを曲がって真っ直ぐ行けば秀吉様の御殿、ここまでは分かるでしょ?』
『うん。いつもの道だからね』
『でも今から行くのはこっちだよ!』
相変わらずのテンションのまま、来た道をそのまま道なりに真っ直ぐに進むと秀吉の御殿の屋根が見えた。
(良かった。色々警戒しちゃったけど本当に近道を教えてくれただけだった。一人で気にしすぎだよね)
『蘭丸君、ありがとう。何かあればこの道も使わせてもらうね』
『……ううん、お礼を言うのはこっちだよ。だって直美がついてきてくれたお陰で計画が上手くいきそうだから』
『えっ?』
一瞬、耳を疑った。
やはり何かあるのだろうか。
『計画?蘭丸君、計画って何?』
『やだなぁ、見たんでしょ?俺が地下牢に向かうとこ』
(やっぱりあれは蘭丸君だったんだ!でも何で!?)
冷たい汗が背中を流れて行った。