第31章 蘭丸
(蘭丸君…もしかして伊賀の忍なの?だとすると毛利元就とも繋がってるの?昨日の夜もあんな所で何してたんだろう。信長様と御影に乗る練習の最中に見たの、あれも蘭丸君だよね…)
考えながら歩いていたら、廊下を曲がった瞬間誰かに思いっきりぶつかってしまった。
『わっ!ごめんなさい!』
『こーら、一体何を考えながら歩いてたんだ。廊下は右側通行だって忘れたのか?』
ぶつかった相手は城下町から戻ってきたばかりの秀吉だった。
『忘れてないですよ。でもごめんなさい。色々考えながら歩いてて』
『珍しく真剣に悩んでるって顔してるな』
『もー、珍しくは余計だよ!私には分からない事だらけだから一人で勝手に考えてただけだよ』
『そうか、後で茶でも入れてやるから御殿に遊びに来い。信長様への報告が済んだら部屋に迎えに行くからいい子にして待ってろよ』
そう言って笑顔を見せると、大きな手のひらで優しく頭をポンポンしてくれた。
(秀吉さんって、相変わらずお兄ちゃんみたい!お茶を入れてくれるなんて楽しみだな。いい機会だから蘭丸君の事を聞いてみよう)
自分の部屋に戻り、馬に関する書物に目を通しながら秀吉が迎えに来るのを待つ。
だが、しばらくして部屋に迎えに来たのは秀吉ではなく蘭丸だった。