第31章 蘭丸
城下町に出るといつもの甘味屋を目指して2人並んで歩く。
政宗は奥州から離れた越中にもファンがいただけあって、安土での人気もかなり高かった。
今回はそれを思い知らされることになる。
政宗との距離が少しでも離れた瞬間、すぐに女の子たちに間に入られ、あっという間に囲まれてしまうのだ。
(政宗と一緒に城下町に来たのは初めてだけど、もしかして毎回こんな状態なの?凄すぎる…)
目的の甘味屋の目の前に来ても政宗はまだ女の子たちに囲まれていた。
(この状況じゃ一人で中に入って買ってきた方が良さそうだよね)
政宗に視線を送るとすぐに言いたいことを理解してくれた様で、すまないという表情をしながら直美が甘味屋に入って行くのを見送ってくれた。
甘味屋の主人は直美の顔を見るとすぐに棚から小瓶を取り出す。
『姫様、いつもありがとうございます』
『こちらこそありがとうございます。また来ますので忘れずに仕入れておいて下さいね!』
そう言ってからハッと気付いた。
(思わず無意識に皆と同じ事言っちゃった!ああー、何だか悔しいなぁ)
金平糖を受け取ってお店を出ると、さっきまでそこにいたはずの政宗の姿がない。
『あれ?政宗?』
代わりにそこに立っていたのは三成だった。