第31章 蘭丸
『奥、地下牢か。鼠の大将は誰だろうな?顕如か北条か、新顔の浅井に朝倉もいるぞ』
『あまり物騒な事、言わないでください』
(やっぱり鼠って本物の鼠の事を言ってたんじゃないんだ)
『いくら城の中とはいえこんな時間にふらふら出歩かない事だ。部屋まで送ってやる』
もちろん部屋に戻ってもすぐに眠れるわけもなく。
(信長様にお願いして蘭丸君を世話役から外してもらおう!)
この日の夜は家康からもらった香袋をさっそく枕元に置いて目を閉じた。
翌日。
『却下だ』
『えーっ!何でですか!?』
朝から天主に元気な声が響いていた。
『蘭丸にはこのまま貴様の世話役を続けさせる。文句は聞かん』
『納得いきません!』
『こんな事を言いに来る暇があるのなら早く馬に乗れるようになれ』
(うっ、それを言われると反論できなくなる…)
『今日は政宗をつけてやる。馬に乗る練習が終わったら城下町で金平糖を買ってこい』
結局願いは聞き入れられず、逆におつかいを命じられてしょんぼりしたまま天主を出たのだった。