第31章 蘭丸
『そういう光秀様は?何してるの?』
質問を質問で返した蘭丸を見て光秀は笑みを浮かべる。
(暗くてはっきりとは見えないけど、口元は笑ってるのに目が笑ってないような…)
『見廻りだ。この城に鼠が入り込んでいないか調べていたところだ。ちょろちょろされては目障りだからな』
『鼠がいるの?うわー、怖い!苦手なんだよね~』
『ならば2人とも早く部屋に戻れ』
『はーい、じゃあね直美!おやすみ!』
光秀に促される様にして蘭丸は足早に部屋へ戻っていった。
『光秀さん、ありがとうございます』
『邪魔をしたかと思ったが違うのか?』
『全然違いますよ!光秀さんの事だからもしかしてずっと見てたんじゃないんですか?』
『ああ、蘭丸がお前に抱きつく前からずっとな。隙だらけでなかなか面白かったぞ』
まさか最初から見られていたなんて…
しかも面白かっただなんて…
もちろんからかわれているのだろうけど言葉が出て来ない。
『だが隙を見せたのは蘭丸も同じだ。ここで一体何を見た?』
(さすがは光秀さん、やっぱり鋭いな)
『奥の方に向かう人影を見たんです。でもそれが蘭丸君かどうかはわかりません』
蘭丸をかばうつもりはないけれど、さっき見たのは蘭丸ではないと言いきる自信も証拠もない。