第31章 蘭丸
『気にしなくていいよ。これからもずっと安土城にいて、いつもみたいにへらへら笑ってればそれでいいんじゃない?』
『へらへらって!?してないから!』
『そう、その感じ。あんたはそれでいい。今日はもう遅いから安土城まで送ってく』
いつもの調子で話が終わると安土城まで家康に送ってもらった。
部屋に着くと今日1日の事を思い出しながら横になる。
しかし、喉が乾いてしまい水を求めて廊下を歩いていると奥の方に向かって歩いていく人影を見つけた。
(あれ?蘭丸君?何してるんだろう。確か向こうには地下牢しかなかったはずだけど…)
深入りはしないつもりでいたけれど、この状況はやっぱり気になる。
水を飲んでから再び同じ場所で待っていると
『直美だー!!』
いきなり後ろから蘭丸に抱きしめられた。
『うわぁ!蘭丸君、驚いたよ』
(なんだ、じゃあさっきのは地下牢の見張りを交代する人だったのかな)
『直美がいたから驚かそうと思って気配を消して近づいて来たんだよ!作戦せいこーう!』
『蘭丸君、気配を消すなんてまるで忍みたいだね!凄い!』
そう言ってから大事な事をすぐに思い出した。
(あああっ!しまった!うっかり余計な事を言っちゃったかも…)
どんな言葉が返ってくるのか、言ってはいけない事を言ってしまった気がして正直とても怖くてたまらなかった。