第30章 褒美
『気に入らないが、上杉の懐刀でもないよりマシだろう。信玄には話をつけてやるからそれまで待っていろ』
『すみません。ありがとうございます』
自分の中で抱えていた問題が一つ解決に向けて動き出した事にほっとする。
『それから、今回の褒美だが…』
それは自分の予想を超えた嬉しいものだった。
翌朝、褒美を受け取るために信長と2人で向かったのは城下にある豪華な厩だった。
信長はある一頭の馬の前で立ち止まる。
するとその馬は少しでも信長に近づこうと鼻先を向けて何か言いたげに信長の元へ寄っていく。
(うわぁ、この子、かなり信長様になついてる!)
馬を撫でる信長の姿に釘付けになっていると
『褒美にこの馬をくれてやる』
そんな言葉をかけられた。
『この子を?本当にいいんですか?』
ビックリして思わず聞き返してしまった。
『当たり前だ。この馬は時間のある時にこの俺が自ら調教してしつけてやった馬だ。これからは貴様が可愛がってやれ』
『ありがとうございます!』
自分の馬がもらえるだなんて驚いたけれど、それが信長自ら手をかけた馬だということが嬉しかった。
さらに今回褒美にもらった馬は遠江鹿毛(とおとうみかげ)という名前だ。
自分の出身地の名前がついているなんて何だかそれだけでワクワクする。