第29章 安土城へ
寝るなんてとてもじゃないけど無理だ。
かといって出来ることもない。
『政宗さん、家康さん、追っ手は後ろからだけとは限りません。囲まれる前に出発しましょう』
馬の様子を見て佐助が声をかける。
謙信たちはまだ来ていなかったが、今はとにかく先を急ぐ事にした。
少し進むと反対側からこちらに向かって馬を走らせてくる人物がいる。
その人物の顔がはっきり見えると政宗と家康が分かりやすく反応した。
『お前!!蘭丸か!!』
『生きてたなんて驚いた』
(蘭丸?もしかしてあの有名な森蘭丸?)
『政宗様、家康様、お久しぶりです!!』
人懐っこい感じのその人物はとびきりの笑顔で森蘭丸と名乗り、直美と佐助に丁寧に自己紹介をする。
その内容によると以前まで安土城にいて信長の身の回りの世話をしていたらしい。
年齢は誰よりも若く見える。わかりやすく言うならば高校生くらいだろうか。
織田軍の戦についていったまま行方不明になっていたが、怪我を治しながら敵地で身を潜めて生活していたと話してくれた。