第28章 佐助のターン
『へーえ、その戦女神ってのは一体どんな女神なんだろうね』
『噂では敵の大将にも刀を向ける強い女神様らしいの!そんな方が来てくれたらこの城下町も安全ね』
『それは面白い話だな。その戦女神の話は誰から聞いたんだい?』
『この町じゃ皆が噂してるわよ』
『刀を向けた敵の大将ってのは誰の事だろうね』
『詳しくは知らないけどその大将の正体も神だったとか何とか…』
『神?』
『おい、信玄。行くぞ』
あからさまに不快感を顔に表した謙信が立ち上がる。
『おっと、時間だな。そのお茶と団子は俺からの贈り物だ。今日は面白い話を聞かせてくれてありがとう、じゃあな』
信玄は運ばれてきたお茶と団子をそのまま女の子たちに渡すと、謙信を追って店を出ていく。
少し歩き、周囲に誰もいないのを確認すると謙信が口を開いた。
『敵の大将に刀を向けたというのはあの女と毛利の話で間違いない。俺が渡した懐刀を毛利に向けて抜いたと本人が言っていたからな。それに毛利の二つ名は謀神だ。だがなぜそれを町娘が噂している?』
『それは戦女神だなんて噂を流して浅井と朝倉をけしかけたのが毛利本人だからじゃないか?城下町にも噂を流して織田軍を挑発してるのかもな』
『何が目的かは知らぬが佐助とあの女に追っ手を寄越すなど言語道断。あの2人を傷付けるものは全員敵だ』
謙信の低い声がその場に響いた。