第28章 佐助のターン
佐助が謙信から黒幕の報告を受ける少し前の事ー
謙信と信玄は情報を集めるため、一乗谷城の城下町を歩いていた。
この城下町は『北ノ京』と呼ばれていて、その規模も文化も京都と近いものがありとても華やかだった。
様々な人や物が行き交うのと同様、情報もまた人から人へと流れていく。
『小さな噂が大きな真実にたどり着くこともあるからな』
そう言って信玄が入って行ったのは大通り沿いにある最近出来たばかりの甘味屋だった。
謙信は無言のまま渋々後をついて行く。
信玄は中に入って2人分のお茶と団子を頼むと、楽しそうに話をしている2人組の女の子たちの隣の席に座り、すかさず笑顔で話しかけた。
『やあ、お嬢さんたち。近くに住んでいるのかな?』
見知らぬ男に急に話しかけられて警戒するかと思いきや、反応はその逆だった。
信玄の笑顔に一瞬にして警戒心が無くなったらしい。
『私たち、近くに住んでいます』
『そうか、俺たちは明日から一乗谷城に仕える事になっているんだ。良かったら城や城主について何でもいいから教えてくれないか?』
『城主は朝倉様よ。あ、そうそう、朝倉様のところに戦女神様が来てくださるって噂を聞いているの。どんな方なのか私も会ってみたいわ』
これは間違いなく直美の事だろうと信玄も謙信も確信した。