第28章 佐助のターン
『体調ならかなり良くなったし、早く安土城に帰った方がいいと思うんだけど厳しいのかな』
『謙信様の話だと越前から安土に向かうまでの間にある村に伊賀の忍が何人も送り込まれているみたい。だから途中の村では休めないんだ。雨が降るかもしれないし、野宿するわけにもいかないでしょ』
さすがに病み上がりの体に野宿はきつい。
『安土に戻るなら、越中を抜けて越後に入り奥州まで出る道もありますが、かなり遠回りになるためお勧めできません。信濃の道はほとんどが山越えになるためかなり時間がかかります』
小太郎も安土に帰るまでの事を色々と考えてくれている様だが、安土城までの最短ルートは危険だということを認識するだけだった。
『あと、伊賀の忍を雇っている黒幕の正体の事なんだけど……』
『謙信様たちが調べてくれているんだったよね、何か分かったの?』
『うん。さっき城下町からここに戻る前に謙信様から聞かされたんだけど……』
小太郎はすでに知っている様で、黙って佐助の話を聞いている。
少し間をおいて眼鏡をクイッと上げてから佐助がようやく口を開いた。
佐助のこの動作、良い報告ではない事が確定だと思い覚悟を決めて耳を傾ける。
『伊賀の忍を雇ったのは毛利元就で間違いないって』
『!!』
その名前を忘れるはずもない。
あまりにも衝撃ですぐに言葉が出て来なかった。