第28章 佐助のターン
目の前で北条氏政と戦う小太郎の姿を間近で見ているからその強さは知っている。
実力で風魔一族の5代目頭領になったのだから、贔屓目に見たとしてもかなり強いのだ。
はっきりいって誰も敵にはしたくない存在だった。
『そっか、小太郎さんは強いもんね』
『うん。俺はまだ忍になって4年しか経っていない。だからいくら謙信様に鍛えてもらっても、忍としては小太郎さんの足元にも及ばないんだ。もちろん謙信様には心の底から感謝してるけどね。今、凄く良い機会だし、直美さんを守るためにもっと強くなるって決めたんだ』
『佐助君?』
(やっぱりいつもと違う…)
『俺は俺のやり方で君を守る。ずっと味方だってこと忘れないで』
無表情で熱く語る佐助にやはり少し違和感を覚えるのだけど。
(落ち着いたら一度ゆっくり話を聞こう)
今はそのままの流れで会話を続けた。
『わかった、ありがとう。でも無理しちゃダメだよ』
(春日山で謙信様と毎日鍛錬してるって言ってたのに小太郎さんからも稽古だなんて本当に強くなりたいんだね)
『ところで、俺たちを追いかけてきた追っ手の事なんだけど』
『何か分かったの?』
無表情のまま眼鏡をクイッと上げる仕草で、良くない報告なのだと確信してしまった。