第28章 佐助のターン
『いいでしょう。直美様との間に何か事情があるのですね。ただし手加減はいたしません。それだけは覚悟してください』
『ありがとうございます』
『一族の者に貴方たちを追ってきたという忍について調べさせておきます。安心して稽古に集中してください』
正直、小太郎がここまでしてくれるなんてとても意外だった。
『小太郎さん、どうしてこんなに親切にしてくれるんですか?主を失ったとはいえ俺達は忍同士だ。仕える者に左右されて明日には敵同士になるかもしれないのに』
色々頼んでおきながらこんな事を聞くのは矛盾しているが、直接聞かずにはいられなかった。
『私たちの一族が北条の手から救われたのは直美様の存在があったからです。
直美様が現れなければ一族はまだ自由を奪われたまま北条の手足となっていたでしょう。今は直美様が我々の心の主なのです。彼女を守るためなら協力は惜しみません』
そう語る小太郎の柔らかな表情を佐助はじっと見ていた。
(心の主だなんて上手い事を言ってるけど直美さんに対する気持ちが表情に出てるな。ま、わからなくもないけど)
『そうだ、きっと謙信様たちと織田軍の皆さんが川沿いを中心に俺たちの事を探しているはずです。直美さんが回復するまでここにお世話になる事を伝えに行ってきます』