第28章 佐助のターン
『煙が見えたのはこの辺りで間違いないはずなんだが、争った形跡は何も見当たらないな』
政宗が崖の下を覗いても特に変わった様子はなく、真下に川が流れているのが見えるだけだった。
しかし崖から落ちそうな場所にある草むらの中に何かを見つけ、手を伸ばしてそれを拾い上げる。
『おい、何だこれ?』
政宗が手にしたそれを見た瞬間、春日山の3人はすぐにその正体と持ち主に気がついた。
『!!これは佐助殿お手製のまきびしで間違いありません!やはり先ほどまでここにいたのでしょう』
それは佐助が煙幕を張って川に飛び込む直前、目立たない場所に目印として置いたまきびしだった。
追っ手の忍は2人が崖下に飛び降りた事に気づくと、クナイだけを回収して仲間とともに去ったため、幸い佐助が置いたまきびしには気がつかなかったのだ。
『この下には川が流れてる。もしもこの場所で敵に追い詰められたら考えられる逃げ道は1つしかない。そうだよな』
政宗のその言葉に全員が同じ事を考えていた。
5人は足早に城下町に出ると、まっすぐに一乗谷川を目指す。
すでに日は落ちていたが川沿いを右手と左手に別れ、佐助と直美の捜索が開始された。