第28章 佐助のターン
『独眼竜に徳川、裏門からは一本道を通ってきた。一体どういう事だ』
『こっちも最初からずっと一本道だよ。言っとくけど2人が城下に出た形跡はなかったから』
家康の言葉に一瞬その場に緊張が走る。
佐助と直美の2人に何かが起きた事を全員が察していた。
『佐助め、なぜ肝心な時に目印のまきびしを置かぬのだ』
『謙信様、そんな事をしたら追っ手に居場所を教えるようなものです。それに佐助殿のことです、追っ手から逃れて直美様と一緒にどこかに身を潜めている可能性もあります』
景家がそう言い終わった時、黙って周囲を見ていた信玄が何かを見つけた。
『謙信!煙だ、もしかしたら佐助の煙幕かもな』
信玄の視線のずっと先に白い煙が見える。
謙信も政宗たちも煙の方向と場所を確認した。
『皆さん、くれぐれも追っ手に警戒してください。人数も目的も、どんな相手なのかもまだ全くわかりませんから』
景家にそう言われると全員で煙の見える方向に向かって走り出す。
だが、煙を目印に道なき道を進んだ先にあったのは切り立った崖だった。
付近にはまだ少し白い煙が立ち込めていたが、すでに人の気配はない。
地面に刺さったクナイは追いかけてきた追っ手が自ら回収し、そこに忍がいたという証拠は何1つ残っていなかった。