第27章 偽りの同盟
『直美さん、久しぶりだね。元気だった?怪我はもういいの?』
佐助に会うのは一ヶ月ぶりだ。
毛利元就と戦った後、富山城で別れたのが最後だったのだ。
『うん、すっかり良くなったよ。でもどうして謙信様たちがここにいるの?』
『小谷城に偵察に出ていた景家さんから文が届いたんだよ。君が巻き込まれてるって。それで謙信様の指示でその日のうちに越後を出てきたんだ』
『そうなんだ。じゃあ、謙信様は信長様を裏切ったりはしないんだよね?』
『うん。大丈夫、心配ないよ。今回は浅井朝倉と偽の同盟を組んで油断させて直美さんを助けるのが目的だから。本当なら織田軍が来てから同盟を破棄して攻撃に転じる予定だったけど、やっぱり謙信様が待てなかったみたいだ』
ようやく全ての状況を把握する事が出来てほっとする。
『ありがとう。改めて皆さんにお礼を言わないとね』
謙信に手渡された懐刀を再び見つめる。
(念のため持ってきて良かった)
『外は危ない。俺たちはここで待機しよう』
『うん』
佐助と話をしながら謙信たちが広間に戻るのを待つことにした。