第27章 偽りの同盟
直美が頷いたその瞬間、謙信が直美の手首を掴んで近くに引き寄せ、胸元に隠してあった懐刀を鞘ごと引き抜いた。
『わっ!謙信様っ!?』
その場にいた全員が直美と謙信とその手に持った懐刀に目を奪われる。
それはまさに先程、謙信が庭で振るっていた姫鶴一文字と同じ物。
『その刀!!これはどういう事だ!まさか戦女神は上杉の……』
『俺はこの目と耳で確かめたぞ。直美は織田軍の女で間違いないはず……』
朝倉も長政もすぐには理解出来ない様だ。
『織田軍の女だと?朝倉、浅井、やはりこの同盟はなしだ。俺の女に手を出した事を後悔するがいい』
(な、な、なんですってー!!)
謙信は懐刀を再び直美に手渡すとその場に立ち上がり、今度は自分の姫鶴一文字を鞘から抜く。
信玄と景家も素早く立ち上がると同時に刀を抜いて朝倉と長政に向き合った。
(ちょっと一体どうなってるの!?)
『直美さんはこっち』
佐助の背中に隠してもらいながら広間の様子を見守る。