第27章 偽りの同盟
広間にもう一つ報告が届く。
『直美様が到着されました』
『すぐにこちらに通せ』
朝倉の一声で広間に直美が呼ばれる。
呼ばれて広間に向かった直美は一歩入ったところで思わず目を疑った。
(謙信様!信玄様に佐助君も!?)
『姫、浅井朝倉軍と上杉軍は同盟を組んだ。同盟を結ぶ条件として今から君の身柄はこちらで預からせてもらうよ』
信玄の発した言葉に驚きを隠せない。
(嘘、嘘だよね?同盟だなんて絶対におかしいよ…とりあえず今は謙信様たちと初対面のふりをしておけばいいのかな、どうしたらいいの…)
朝倉と浅井に促され、謙信の目の前に移動して正座し深々と頭を下げた。
(もしかしてこれから春日山城に行く事になるのかな。ここよりはいいけど…でも裏切りは嫌だな)
頭を上げて謙信と視線を合わせると、何故かとても楽しそうな表情をしている。
(やっぱり何を考えているのか全然わからない!)
そして直美にしか聞こえない小さな声で謙信に話しかけられた。
『俺がやった懐刀を今持っているか?』
『?』
質問の意図は分からないが、謙信の目を見ながら小さくこくりと頷いた。