第26章 金ヶ崎城
『浅井が朝倉についたのは間違いないです。敵はただ一人織田信長と断言して、謙信様との同盟を考えている様に見えました』
『朝倉には織田軍と上杉軍の休戦協定の事を知られてないって事だね』
『そう考えて間違いないだろうな』
『私に考えがあるのですが聞いてもらえますか?』
ここで景家が一つの案を思いつく。
それは上杉軍と浅井・朝倉連合軍が偽りの同盟を組むというもの。
手を組むふりをして直美を安全な場所に保護し、その直後に上杉軍が浅井朝倉を裏切って攻撃に転じるという内容だった。
『裏切り者は裏切り者によって泣きを見るのが当然の報いでしょう』
楽しそうに語る景家の表情に家康の口から思わず言葉が漏れる。
『景家さん、あんた、なかなか食えない男ですね』
『誉め言葉として受け取っておきます。朝倉は越後への侵略はないと言っていましたがおそらく嘘です。今のうちに潰せば越後のためにもなりますから』
裏切り者とその仲間の言うことなど景家には信じられなかった。
『で、俺たちはどうしたらいい』
政宗が景家に策を尋ねる。
『朝倉の一乗谷城を攻める前に、後ろから援軍が来ないようまずは小谷城を潰していただきたい』
『それなら問題ない。すでに秀吉と三成の隊が監視を続けてる。あっちは所詮大将のいない軍だ、あっという間に蹴散らしてそのまま城を落としてやるよ』
『さすが、織田軍は用意周到な様ですね』
『全部信長様の筋書き通りなんだよ。でも上杉が絡んでくるのは想定外だったかもね』
『では小谷城を落としたらそのまま一乗谷城を攻めてください。こちらで直美様を保護し、織田軍が攻めてきたところで我々も攻撃に転じます。一乗谷での決戦は4日後でいかがですか?』
『ああ、わかった』
『俺と政宗さんはまた北近江に戻って小谷城攻めだね』
『私はこれから一乗谷に先回りして謙信様と合流し、作戦を伝えます』
3人は話を終えると宿屋から静かに出ていき、馬に乗ってそれぞれが目指す方向へと進んで行った。