第26章 金ヶ崎城
景家が金ヶ崎城の城門まで来ると朝倉の家臣たちがすぐに出迎えた。
そのまま広間に案内されて待っていると朝倉、浅井に続いて直美が入室する。
(やっぱり景家さんだ!!)
ややこしい事にならない様、初めて会ったふりをする事にした。
景家も直美にすぐ気がついたが、安易に声をかける事はしなかった。
(大丈夫、そのままでお願いしますね)
言葉には出来ないがお互い目と目を合わせ、視線と表情で思いを伝える。
朝倉が上座に座るのを確認すると景家は丁寧に挨拶を始めた。
『突然の訪問をお許しいただきありがとうございます』
『今日はどの様な用件で参られたのか聞かせてもらおう』
朝倉と対峙する景家は躊躇する事なく話を始めた。
『噂で北近江の浅井様が織田軍との同盟を解消し、越前の朝倉軍についたと聞きましてその確認に参りました。単刀直入に聞きますが、もしや越後への侵略などお考えですか?』
景家は牽制するような鋭い眼差しで朝倉に視線を向ける。
『いや、越後の軍神とやりあうつもりはない。敵は織田信長、ただ一人だ』
景家からの問いに朝倉はそうはっきりと答えた。
『そちらの女性は織田軍の方ではないですか?なぜここにいるのでしょう』
『もしや、越後でも噂になっているのか?この女は戦女神、必ず戦を勝利に導く存在だ。織田軍にいられては困るからな。今後ずっと俺のそばに置いて朝倉軍を勝利に導いてもらう』
『戦女神?この方がですか?』
『そうだ。調べによるとこの女が安土城で暮らすようになってから織田軍は負け知らずだ。浅井も安土に出向きこの女がただの姫ではないと自らの目で確認している』
それはおそらく単なる偶然と大きな誤解なのだけれど。
(景家さん、この人の言ってる事めちゃくちゃです)
(戦女神などいるわけがありません。大丈夫ですよ)
直美と景家は再び視線を合わせ、無言の会話を交わした。