第26章 金ヶ崎城
駕籠から降りた直美。
このまま走って逃げようとしたが、長政がすぐ近くにいるのが分かり逃走を諦める。
じっと長政を睨み付けて一歩も動こうとしない。
『長政様、私は本当に戦女神なんかじゃないんです!早く信長様の元に帰らせてください』
『残念だがそれは無理だ。命と生活はきちんと守ってやるからまずは大人しくついてくればいい』
『嫌です!行きません!』
手首を掴まれて引っ張られる。
ずっと駕籠に乗せられていたせいか、足に力が入らない。
長政を睨みながら半分ふらついた様な状態で城門をくぐった。
その一部始終を政宗、家康、そして景家も離れた場所から目撃していた。
金ヶ崎城の敷地内に入ると長政から驚きの一言を告げられる。
『今日はこれからあの越後の軍神、上杉謙信の家臣がここを訪ねてくる予定だ』
(えっ!?謙信様の家臣?佐助君が来るとは思えないから景家さんのこと?)
『あの…もしかしたらですけど、長政様と朝倉様は越後の上杉軍と手を組むのですか?』
まさかとは思うが念のために確認をしてみる。
『あちらの出方次第では大いにありえる。軍神と手を組めば織田軍などひとたまりもないだろう。軍神に戦女神、どんな戦にも負ける気がしないな』
(織田軍と上杉軍は休戦協定を結んでるからそれはないと思うけど…長政様が信長様を裏切った様に謙信様も裏切ったりしないよね?)
『私も同席してよろしいでしょうか?』
一体どういう事なのかちゃんとこの目と耳で確かめたかった。
『ああ、構わない。噂の戦女神として紹介すればこちらに有利な交渉が可能になるからな』
(謙信様が浅井朝倉の2人と手を組むなんてやっぱり考えられないよ…)
話をしながら長政と一緒に朝倉の待つ部屋に向かう。
冷静に会話するように努めても頭の中はまだ大混乱していた。