第26章 金ヶ崎城
馬を走らせ、金ヶ崎城に先回りした政宗と家康は城から離れた場所に身を潜めていた。
『なんだかこの城、凄い場所に作られてるな』
政宗が目を細めて見ているのは城を囲うような断崖絶壁。
金ヶ崎城は北、西、東の三方向が崖になっている場所に作られていた。
城に入るには南の城門をくぐるしかない。
『出入り口は一つ。崖を登っての奇襲は忍でもなきゃ不可能ですね』
『こんな崖っぷちに作って籠城戦になったらどうするつもりだろうな。ま、中はとんでもない造りになっているかもしれないが』
『まずは謙信の家臣に浅井と朝倉の目的を聞き出してもらうのが先です。くれぐれも勝手に入って暴れないでくださいよ』
城の周囲を偵察していると城門の手前で駕籠が降ろされ、ゆっくり直美が出てくるのが見えた。
それと同時に長政が城門から現れる。
少し離れた場所からでも直美が長政を睨んでいるのが見えた。
『あいつ、やっぱり怖いもん知らずだな』
『普通と違うから信長様に気に入られたんでしょ。武将にたてつく女なんて見たことない』
直美と長政の会話は聞こえないが2人でしばらく話をした後、手首を掴まれて長政と一緒に城門をくぐっていくのを確認した。
『誰がどう見ても自ら望んでここに来たって感じじゃないですね』
『ああ、下手すりゃ本当に戦だな。上杉の家臣も多分どこかからこの状況を見てるはずだ』
それから政宗と家康は小さな城下町に向かい、景家からの報告を待つことにした。