第25章 茶会
一方、政宗と家康は小谷城から西の城下町を目指して全力で走っていた。
そして大通りの先に見覚えのある人物を見つける。
『政宗さん、あの人。さっき直美が南の城下町で会話してた謙信の家臣ですよ』
『ここで何してんだ?怪しい動きがなかったかちょっと聞いてみるか』
2人が景家に近づくと景家もすぐに2人の存在に気がついた。
お互いに何かを察したらしく、言葉を交わす前に全員の表情が堅くなる。
先に話しかけたのは景家だった。
『茶会は終わりましたか?直美様は何処です?』
『浅井が裏切った。直美はどこかに連れ去られた可能性が高い。この辺りで何か不審な動きはなかったか?』
『成る程、ここでは不審な動きしか見ていませんよ。今しがた朝倉義景と浅井長政の2人が馬で駆けていきました。その後ろには朝倉の家紋入りの豪華な駕籠がついて行きましたね』
『それだ!今から追いかければ間に合うぞ!』
『ちょっとお待ちください!』
すぐに追いかけようとした家康と政宗を景家が静止する。
『浅井は一旦城に運んだ武器をこの城下町に隠しています。下手に攻めれば挟み撃ちにされて一気に不利になりますよ』
『じゃあどうするの?何か考えでもあるわけ?』
家康が不服そうに言葉を返した。
『2日後に私が朝倉と直接交渉して目的を探ります。内容次第で謙信様とともに朝倉の居城である一乗谷城を攻めて直美様を救出します』
『朝倉も絡んでるなら織田軍も動くよ。こうなる事は信長様なら想定内だから。むしろこうなるのがわかってて茶会に来させたのかもね』
『秀吉の反対を楽しそうに押し切ってたからな、おそらく確信犯だ。今頃、織田軍がこっちに向かってるだろう』
家康と政宗の言う事は正しく、全ては信長の読み通りになっていた。
『今、何も出来ないのはもどかしいけど挟み撃ちにされるのは困るから一旦町を出ますよ』
『私はこのまま駕籠を見失わない様、追いかけます』
景家は政宗たちと別れると気配を消したまま駕籠の後をついて行った。
政宗と家康が城下町を離れると信長の寄越した織田軍の兵を見つけ、すぐに秀吉の隊と合流する。
後方には三成の率いる隊も続いていた。