第25章 茶会
その頃、景家は南から西の城下町に移動を終えて町の様子を偵察していた。
南の城下町と同じように裏道に入れば直角の曲がり角が多く、店の並ぶ大通りにもたくさんの死角が存在している。
裏通りを歩いて大通りに戻ったところで、二頭の馬が勢い良く町の外れに向かって駆けていくのを目撃した。
(あの馬に乗っているのは越前の朝倉、それにここの城主の浅井?浅井は今頃茶会のはずでは?)
不審に思い、馬が駆けてきた方向に向かって歩くと、今度は豪華な駕籠とすれ違う。
その駕籠には綺麗な装飾品と朝倉家の家紋を確認する事が出来た。
(ここは表向きは織田軍と同盟を組んでいるはず。しかし織田軍に敵対する朝倉と朝倉家に関わる重要人物がいた……先ほどの駕籠、まさかとは思うが…)
景家は短い時間であらゆる可能性を考えていた。
すれ違った駕籠の中にはぐっすりと眠っている直美がいるのだが、それを疑ったとしても覗いて確認する事は出来ない。
景家は少し離れて歩きながら駕籠の護衛をしている兵に、どこに向かっているのかを尋ねた。
警戒した兵は何も語ってくれなかったが景家が越後の軍神、上杉謙信の家臣であることを伝えると恐ろしくなったのか質問に答え始めた。
兵から聞き出した話によると、最終的な行き先は朝倉の居城である一乗谷城。
休憩と視察のため途中で幾つか支城を経由するらしい。